イメージ情報開発のクラッド大分買収、2億円は利益の何倍か

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イメージ情報開発株式会社(東証グロース、3803)は2026年10月20日、株式会社クラッドが保有する株式会社クラッド大分の全株式を取得し、子会社化すると発表した。取得価額は2億円で、手元資金を充てる。株式譲渡の実行は10月23日の予定である。

クラッド大分は大分市で計198席のコンタクトセンターを運営し、従業員は167名(うちアルバイト142名)。売上高は4億6,600万円(2025年12月期)である。イメージ情報開発は9月に公表した中期経営計画で「3年間で10件以上」のロールアップM&Aを掲げており、本件はその第2号案件となる。

この案件の価格を読むうえで鍵になるのは、「調整後営業利益」である。本記事では、2億円が何倍の利益に対する価格なのかを複数の物差しで計算し、価格の根拠となる調整と、売上の全額を売り手に頼る取引構造を検証する。

※情報基準日:2026年10月20日。数値は同日付のイメージ情報開発の適時開示および補足説明資料による。クラッド大分の数値は監査を受けていない。

取引の概要

項目 内容
買い手 イメージ情報開発株式会社
売り手 株式会社クラッド(旧マスターピース・グループ株式会社)
対象会社 株式会社クラッド大分(旧MPG大分BPO-Center株式会社)
取得株式 180株(100%)
取得価額 2億円(アドバイザリー費用等約100万円は別)
第三者算定機関の算定結果 1億8,900万円〜2億2,700万円
資金 手元資金
同時に結ぶ契約 イメージ情報開発・クラッド・クラッド大分の3者間の業務提携契約
株式譲渡実行日 2026年10月23日(予定)
連結への取り込み 2027年3月期は2026年10月〜2027年3月の6か月分

2億円は、算定結果の幅(1億8,900万〜2億2,700万円)の下から約29%の位置にあり、中央値(2億800万円)をやや下回る(筆者計算)。

2億円は何倍の利益に対する価格か

営業利益は3年で4分の1以下に

決算期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
売上高 4億3,200万円 4億7,300万円 4億6,600万円
営業利益 2,600万円 2,200万円 600万円
営業利益率 6.0% 4.7% 1.3%
親会社グループへの管理費等 3,500万円 3,600万円 3,900万円
調整後営業利益(参考値) 6,100万円 5,800万円 4,500万円
調整後営業利益率 14.1% 12.3% 9.7%
純資産 500万円 2,000万円 2,600万円

(営業利益率・調整後営業利益率は筆者計算)

調整後営業利益は、クラッドグループに払っていた本社役員報酬、管理者の出向費用、総務・人事・経理の代行費を営業利益に足し戻した参考値である。開示資料は、人件費の増加により2025年12月期は減益になったと説明している。

物差しによって倍率が大きく変わる

物差し 金額 2億円は何倍か
営業利益(2025年12月期) 600万円 約33倍
当期純利益(同) 600万円 約33倍
調整後営業利益(同) 4,500万円 約4.4倍
純資産(同) 2,600万円 約7.7倍
売上高(同) 4億6,600万円 約0.43倍

(筆者計算)

計上された営業利益で見れば33倍、調整後営業利益で見れば4.4倍である。どちらの数字が実態に近いかで、この買収の評価は大きく変わる。開示資料によれば、価格はデューデリジェンスの結果と「正常収益力」を踏まえた算定結果を参考に決めたとされており、買い手は調整後の利益を基準に考えているとみられる。

3,900万円はすべて消えるのか

調整後営業利益の前提は、クラッドグループに払っていた3,900万円がなくなることである。しかし、経理・人事・総務の業務や管理者の役割そのものがなくなるわけではない。開示資料も、管理機能をイメージ情報開発グループの体制に移し、「管理コストの適正化」を進めると書いている。

つまり、取得後の実際の利益は、600万円と4,500万円の間のどこかになると考えられる。仮に3,900万円のうち半分がイメージ情報開発側で新たに必要になれば、利益は約2,550万円で、2億円はその約7.8倍になる(筆者試算)。価格の妥当性は、親会社に払っていた管理費をどこまで削れるかにかかっている。

純資産2,600万円に対して2億円を払うため、差額の約1億7,400万円(価格の約87%)の多くがのれんになる見込みである(筆者計算)。開示資料も、のれんが発生する見込みで、金額と償却期間は確定していないとしている。

売上の全額が売り手から来る

再委託の構造

開示資料によれば、クラッド大分の売上高は全額がクラッドからの業務の再委託によるものである。クラッドが大手企業などから受けたコンタクトセンター業務や事務処理業務(25社・36プロジェクト、2026年4月末現在)を、クラッド大分が運営している。

株式取得後もこの構造は変わらない。クラッドが元請として営業窓口を担い、クラッド大分に再委託する。そのため、株式譲渡と同じ日に3者間の業務提携契約を結ぶ。

項目 内容
当事者 イメージ情報開発、クラッド、クラッド大分
内容 クラッドが元請として営業窓口を維持し、個別契約によりクラッド大分へ再委託
期間 株式譲渡実行日から2年間(6か月前までに更新拒絶がなければ2年間自動更新)
保証 クラッド大分がクラッドに負う債務をイメージ情報開発が保証

2年後の売上は約束されていない

イメージ情報開発は2億円を払うが、その売上の源泉である顧客との契約は、売り手のクラッドが持ち続ける。契約期間は2年で、更新拒絶の通知があれば終わる。開示資料は、クラッドの株主構成や業績を「相手先の意向により」非開示としている。

クラッド自身もコンタクトセンター事業やAI-BPO事業を営んでいる。クラッド大分を売った後、クラッドが他の拠点や自社運営に仕事を移せば、クラッド大分の売上は減る。業務提携契約は、それを防ぐための仕組みと位置づけられる。ただし、開示資料は最低発注量や価格の取り決めがあるかを示していない。

イメージ情報開発がクラッド大分の債務を保証する点も、買い手の負担が売り手側に偏っていることを示す。開示資料はイメージ情報開発自身による案件獲得も進めるとしており、2年の間にクラッド以外の顧客をどれだけ増やせるかが、売り手依存を下げる鍵になる。

AIで原価構造を変えられるか

補足説明資料によれば、クラッド大分の原価の中心は人件費で、売上高の約8割を占める。イメージ情報開発は、業務提携先の株式会社fonfunとのAI開発リソースを投入し、コンタクトセンター業務を「AIエージェント+人」の運用に変えるとしている。料金体系も、席数・時間課金から月額基本料+処理量に応じた従量課金に移す方針である。

項目 数値
席数 198席(大分センター160席、リモート38席)
従業員 167名(正社員25名、アルバイト142名)
1席あたり売上高 約235万円
従業員1人あたり売上高 約279万円

(2025年12月期売上高ベース、筆者計算)

ここには矛盾も含まれる。席数・時間で課金する契約のままAIで作業時間を減らせば、効率化した分だけ売上も減る。元請のクラッドが顧客と結ぶ契約の形を変えられるかどうかは、イメージ情報開発だけでは決められない。AIによる効率化の果実を誰が受け取るかは、クラッドとの再委託契約の条件次第である。

中期経営計画の中の位置づけ

イメージ情報開発は2029年3月期に売上高50億円、EBITDA5億円、時価総額100億円を目標に掲げている。第1号案件は2026年10月1日のディグロスCRM事業の譲受で、本件が第2号である。クラッド大分の売上高4億6,600万円は、売上目標50億円の約9%にあたる(筆者計算)。

地方の労働集約型BPO拠点を取得し、AIで利益率を上げるという「型」を今後の案件に横展開する計画である。本件はその最初の検証になる。

2億円の妥当性を決める2つの条件

イメージ情報開発がクラッド大分に払う2億円は、計上された営業利益600万円に対しては約33倍、親会社への管理費を足し戻した調整後営業利益4,500万円に対しては約4.4倍である。算定結果の幅の中ではやや下寄りの価格だが、その前提は調整後利益が実現することにある。

条件は2つある。1つは、クラッドグループに払っていた3,900万円の管理費を、自社グループに移した後にどこまで小さくできるか。もう1つは、売上の全額を占めるクラッドからの再委託が、2年の契約期間の後も続くかである。

ロールアップの第2号案件として、イメージ情報開発の株主が今後の決算で確認すべきは、クラッド大分の取得後の営業利益と、クラッド以外からの受注がどれだけ増えたかである。

買収価格を利益の倍率で検証した記事として、以下もある。

ココナラ、AI実装のAcrosstudioを51%取得——100%換算17億円は売上高の1.5倍、営業利益の約37倍
https://assetsalon.online/coconala-acrosstudio-acquisition-2026/

引用元

一次情報

イメージ情報開発株式会社「株式会社クラッド大分の株式の取得(子会社化)及び業務提携契約の締結に関するお知らせ」(2026年10月20日、TDnet)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20261020/140120261016552283.pdf

イメージ情報開発株式会社「株式会社クラッド大分の株式の取得(子会社化)及び業務提携契約の締結に関する補足説明資料」(2026年10月20日、TDnet)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20261020/140120261020553238.pdf

ディスクロージャー

本記事はイメージ情報開発株式会社の適時開示資料および補足説明資料をもとにした分析です。利益率、各種倍率、のれんの概算、管理費の一部が残る場合の試算、1席あたり・1人あたり売上高などは、開示数値から筆者が計算したものです。クラッド大分の数値は同社の計算書類に基づくもので、監査を受けていません。取引の意図や評価に関する記述は、開示資料に明示されていない筆者の解釈を含みます。特定銘柄の売買を勧めるものではありません。判断にあたっては一次情報を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

アセットサロン編集長

日系M&AアドバイザリーファームにてM&A業務に従事。上場企業・中堅企業のM&A仲介・FA業務を中心に、デューデリジェンス、バリュエーション(DCF法・マルチプル法)、スキーム設計、契約交渉、PMI支援を経験。現在は、TDnetに日々公開される上場企業の適時開示情報をもとに、M&Aの背景・財務的影響・業界再編の動向を独自の視点で解説するメディア「アセットサロン」を運営。専門分野:上場会社M&A・TOB・PMI・企業価値評価・資本政策・IR解説

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