グローバルウェイ、BI分析のLHitを75百万円で子会社化

PR

グローバルウェイ(東証グロース、3936)は2026年10月14日、LHit株式会社の株式を取得し子会社化すると発表した。創業者で代表取締役の石川智啓氏から、発行済株式333株のうち299株(89.8%)を75百万円で買い取る。

LHitは2010年設立の神奈川県川崎市の会社で、ローコード・ノーコード型のBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを使ったデータ分析コンサルティングと、データ分析人材の育成を手がける。2026年5月期の売上高は約1.5億円、純利益は約22百万円だった。

本記事では、75百万円という価格をLHitの利益と純資産に照らして倍率を計算し、なぜこの水準で決まったのか、創業者に約1割の株式を残す設計にどんな意味があるのかを整理する。

※情報基準日:2026年10月15日。数値は2026年10月14日付のグローバルウェイ開示資料による。

取引の条件

項目 内容
買手 株式会社グローバルウェイ
対象会社 LHit株式会社(神奈川県川崎市)
売手 石川智啓氏(LHit代表取締役、持株比率100%)
取得株式数 299株(発行済株式333株の89.8%)
取得価額 75百万円(1株当たり250,836円)
取得後の持分 89.8%(残り34株・10.2%は売手が継続保有とみられる)
契約締結・株式譲渡 2026年10月末(予定)
経営体制 石川氏が取得後も継続して経営にあたる予定
業績影響 2027年3月期の連結業績への影響は軽微

グローバルウェイとLHitの間に資本関係・人的関係はないが、グローバルウェイの連結子会社であるタイムチケットがLHitに業務の一部を委託しており、継続的な取引がある。

LHitの財務

決算期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 179,201千円 140,145千円 151,908千円
営業利益 12,460千円 4,734千円 33,580千円
経常利益 12,459千円 13,579千円 34,581千円
当期純利益 8,210千円 8,740千円 21,771千円
純資産 42,996千円 51,736千円 73,508千円
総資産 100,292千円 67,062千円 99,909千円
営業利益率 7.0% 3.4% 22.1%
自己資本比率 42.9% 77.1% 73.6%

(営業利益率、自己資本比率は筆者計算)

売上高は2025年5月期に約22%減り、2026年5月期に約8%戻した。営業利益は3期で4.7百万〜33.6百万円と振れ幅が大きく、直近期の営業利益率22.1%は3期で突出して高い。2025年5月期は営業利益4.7百万円に対し経常利益が13.6百万円あり、本業以外の収益が利益を支えた年だった。

75百万円は何の何倍か

1株当たり250,836円を発行済株式333株に掛けると、100%換算の株式価値は約83.5百万円になる。

指標 倍率
PER(2026年5月期純利益) 約3.8倍
PER(3期平均純利益12.9百万円) 約6.5倍
PBR(2026年5月期純資産) 約1.14倍
株式価値/営業利益(2026年5月期) 約2.5倍
株式価値/営業利益(3期平均16.9百万円) 約4.9倍
株式価値/売上高(2026年5月期) 約0.55倍

(すべて筆者計算。有利子負債と現預金は開示されていないため、企業価値ベースの倍率は計算していない)

直近期の純利益で見たPERは約3.8倍で、上場会社による非上場企業の買収としては低い水準である。利益の振れを均した3期平均でも約6.5倍にとどまる。

価格は純資産にほぼ張り付いている

取得する89.8%分の純資産は約66.0百万円で、支払う75百万円との差は約9百万円にすぎない(筆者計算、資産・負債の時価評価前)。グローバルウェイは、LHitの帳簿上の純資産にわずかな上乗せをした価格で買っていることになる。

LHitの自己資本比率は73.6%と高い。資産の内訳は開示されていないが、純資産の多くが現預金などの流動資産であれば、買収後に手元資金として使える部分が価格の大半を占める。その場合、事業の収益力そのものに払った対価は、純資産を上回る約9百万円の部分にとどまる計算になる。

なぜこの倍率で決まったのか

開示資料は価格決定の経緯を説明していないが、倍率が低くなりやすい要因は財務から読み取れる。

1つ目は利益の振れである。直近期の営業利益は前期の約7倍で、この水準が続くかは分からない。買い手が直近期ではなく、より低い利益水準を前提に価格を組んだ可能性がある。

2つ目は規模と人への依存である。売上高約1.5億円のコンサルティング会社の価値は、代表者と少数の専門人材に大きく依存する。代表者が抜ければ顧客と知見が失われるリスクがあり、それが価格を押し下げる。

創業者に10.2%を残す設計

グローバルウェイは発行済株式の100%ではなく89.8%を取得し、石川氏は取得後も代表取締役として経営を続ける。開示資料は残りの株式の扱いを記載していないが、売手が100%保有していたことから、34株(10.2%)は石川氏の手元に残るとみられる。

人に価値が依存する会社の買収で、創業者に一部の株式を持たせ続けるのは、経営への関与を保つための一般的な手法である。LHitの利益が伸びれば、石川氏が持つ10.2%の価値も上がる。将来この株式を買い取る取り決めがあるかは開示されていないが、残した持分が、低い倍率で売った創業者にとって将来の上乗せの受け皿になっていると考えられる。

グローバルウェイから見れば、89.8%の取得で連結子会社化と経営の主導権は確保しながら、創業者の継続を株主としての利害で裏付ける形になる。

グローバルウェイが求めたもの

グローバルウェイは、デジタル・ソリューション事業で、SalesforceやHubSpotなどのクラウドソリューションの導入支援とAIソリューションを提供しており、これを中核の成長事業と位置づけている。M&Aも成長の柱の一つに掲げる。

データ分析・BIの機能の補完

クラウドとAIを使ったDX支援に、LHitのデータの可視化・分析・利活用の専門性を組み合わせ、データを起点にしたDX支援を一括で提供できる体制をつくる。CRMやマーケティングツールを導入した顧客が次に必要とする、データ分析の工程を取り込む狙いとみられる。

データ分析人材の育成機能

需要が拡大する一方で不足しているデータ分析人材について、LHitの育成機能を取り込み、人材の確保と内製化を進める。採用で集めにくい人材を、育成事業を持つ会社ごと取得する形である。

既存取引先からの子会社化

グローバルウェイの子会社タイムチケットは、すでにLHitに業務を委託している。外部の委託先として仕事ぶりを確認できた相手を買収するため、買収前の情報の非対称性は比較的小さいと考えられる。小規模の買収で、デュー・ディリジェンスの負担を抑えるうえでも合理的な相手選びといえる。

類似案件との倍率比較

上場会社が非上場の小規模会社を取得した案件で、Asset Salonが過去に取り上げた事例の倍率と比べる。

案件 価格 純利益倍率
グローバルウェイ/LHit(本件) 100%換算約83.5百万円 約3.8倍(3期平均で約6.5倍)
スマサポ/トレードワン 借入742百万円で子会社化 約7.6倍
情報戦略テクノロジー/Flyby 100%換算8.3億円 約9.8倍
ニフティライフスタイル/レプリス 16.6億円 約17倍

(他案件の倍率は各記事のタイトルに記載の数値)

業種も規模も異なるため単純比較はできないが、本件の倍率は3期平均で見ても比較対象の下限を下回る。規模が小さく利益が振れやすい会社ほど、倍率が低く決まりやすいことが分かる。

安く買えた分、問われるのは人の定着

グローバルウェイは、LHitの89.8%を75百万円で取得する。100%換算の株式価値は約83.5百万円で、直近期純利益の約3.8倍、純資産の約1.14倍。支払額は取得する持分の純資産とほぼ同じで、事業価値への上乗せは小さい。

倍率の低さは割安さであると同時に、売手と買手が「この会社の利益は人に依存し、振れる」と見たことの表れでもある。

価格面のリスクが小さい以上、この買収の成否は、石川氏と分析人材がグループに残り、グローバルウェイの顧客にデータ分析を横展開できるかで決まる。創業者に10.2%を残した設計は、その一点に向けた手当てと読める。

スモールM&Aの価格の決まり方は、以下の記事でも取り上げている。

スマサポ、トレードワンを借入742百万円で子会社化——純利益の約7.6倍で入居者アプリをD2Cチャネルに
https://assetsalon.online/sumasapo-tradeone-acquisition-2026/

情報戦略テクノロジー、Flybyを資産管理会社ごと取得——100%換算8.3億円・純利益の約9.8倍、3件目の子会社化
https://assetsalon.online/joho-senryaku-technology-flyby-subsidiary-2026/

ニフティライフスタイル、レプリスを16.6億円で完全子会社化——利益率20%超のライフライン取次をPER約17倍で取得
https://assetsalon.online/niftylifestyle-repuris-kabushikishutoku/

引用元

一次情報

株式会社グローバルウェイ「株式取得(子会社化)に関するお知らせ」(2026年10月14日、TDnet)

株式会社グローバルウェイ IR
https://www.globalway.co.jp/ir/

ディスクロージャー

本記事は株式会社グローバルウェイの適時開示資料をもとにした分析です。100%換算の株式価値、PER、PBR、営業利益倍率、売上高倍率、営業利益率、自己資本比率、取得持分の純資産との差額などは開示数値から筆者が計算したもので、残存株式の扱いや価格決定の背景に関する記述のうち開示資料に明示されていないものは筆者の解釈です。他案件の倍率は当サイト既存記事の記載によります。特定銘柄の売買を勧めるものではありません。判断にあたっては一次情報を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

アセットサロン編集長

日系M&AアドバイザリーファームにてM&A業務に従事。上場企業・中堅企業のM&A仲介・FA業務を中心に、デューデリジェンス、バリュエーション(DCF法・マルチプル法)、スキーム設計、契約交渉、PMI支援を経験。現在は、TDnetに日々公開される上場企業の適時開示情報をもとに、M&Aの背景・財務的影響・業界再編の動向を独自の視点で解説するメディア「アセットサロン」を運営。専門分野:上場会社M&A・TOB・PMI・企業価値評価・資本政策・IR解説

シェアする