健康食品業界のビジネスモデル|メーカー・OEM・通販・D2Cはどう儲けるのか【2026年版】

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健康食品業界では、同じ「健康食品」を扱っていても、企業によって利益の生み方は大きく異なります。

原料を開発・供給する企業、サプリメントを受託製造するOEM・ODM企業、自社ブランドを展開するメーカー、通販・D2Cで消費者へ直接販売する企業、ドラッグストアなどを通じて販売する企業――。

一口に健康食品業界といっても、そのバリューチェーンには複数のビジネスモデルが存在します。

特に健康食品では、製造原価だけでなく、広告宣伝費、顧客獲得コスト(CAC)、継続率、LTV(顧客生涯価値)などが収益性を大きく左右します。

そのため、「サプリメントは原価が安いから儲かる」といった単純な理解では、健康食品企業の本当の収益構造は見えてきません。

本記事では、健康食品業界のビジネスモデルを、原料、OEM・ODM、ブランド、通販・D2C、店舗・卸などに分け、「誰がどこで利益を生み出しているのか」を解説します。

健康食品業界のバリューチェーン

健康食品が消費者へ届くまでには、大きく次のようなプレイヤーが関わっています。

原料・素材メーカー

OEM・ODMメーカー

ブランド・商品企画会社

卸売会社

通販・EC・ドラッグストア等

消費者

ただし、すべての企業がこの順番で事業を行っているわけではありません。

自社で原料研究から製造、ブランド、通販まで行う企業もあれば、商品企画とマーケティングだけを行い、製造はOEMへ委託する企業もあります。

したがって健康食品会社を分析するときには、「何を売っている会社か」だけではなく、

バリューチェーンのどこを自社で持ち、どこを外部へ委託しているか

を見ることが重要です。

健康食品業界の6つのビジネスモデル

健康食品業界の代表的なビジネスモデルは、次のように整理できます。

ビジネスモデル 主な顧客 主な収益源 競争力
原料・素材 健康食品メーカー、OEM 原料販売 独自素材、研究、特許
OEM・ODM ブランド企業 製造・開発受託 製造技術、品質、提案力
ブランドメーカー 消費者・小売 商品販売 ブランド、商品開発
通販・D2C 消費者 直接販売 CAC、LTV、CRM
店舗・卸 小売・消費者 卸売・店頭販売 配荷、棚、販売網
垂直統合型 消費者・小売 複数 研究~販売の統合力

① 原料・素材メーカーのビジネスモデル

健康食品の上流には、機能性素材や原料を供給する企業があります。

例えば乳酸菌、コラーゲン、ビタミン、ミネラル、植物由来成分などです。

原料メーカーの顧客は一般消費者ではなく、健康食品ブランドやOEMメーカーなどのBtoB企業です。

収益モデルは比較的シンプルで、

原料販売量 × 原料単価

が売上の基本となります。

しかし、原料ビジネスでは単なる「素材の販売」だけでは差別化しにくくなります。

そのため競争力になるのが、

  • 独自素材
  • 特許
  • 研究データ
  • 臨床試験
  • 機能性表示食品への対応
  • 安定調達能力

などです。

原料は「エビデンス」とセットになる

健康食品市場では、同じような原料でも科学的根拠の有無によって商品価値が変わる可能性があります。

特に機能性表示食品では、事業者が安全性・機能性に関する科学的根拠等を届け出ます。

そのため原料メーカーが、

研究データ
+
機能性素材
+
届出支援

まで提供できれば、ブランド企業にとっての商品開発負担を下げることができます。

原料メーカーにとって研究開発は単なるコストではなく、原料価格や採用率を高めるための投資にもなります。

② OEM・ODM企業のビジネスモデル

健康食品業界ではOEM・ODMが非常に重要な役割を担っています。

OEMはOriginal Equipment Manufacturerの略で、ブランド企業から依頼を受けて製品を製造するビジネスです。

ODMはOriginal Design Manufacturerの略で、製造だけでなく、処方設計や商品企画などまで提供します。

健康食品ブランドを立ち上げる企業が必ずしも自社工場を持つ必要がないのは、このOEM・ODM企業が存在するためです。

OEM企業はどう儲けるのか

OEM企業の基本的な売上は、

受注数量 × 製造単価

です。

したがって工場稼働率が収益性に大きく影響します。

工場を建設すれば、

設備投資
減価償却費
工場人員
品質管理
固定費

などが発生します。

生産量が増えれば固定費を多くの商品へ分散できるため、一般に稼働率上昇が利益改善につながります。

OEMの代表企業① アピ

健康食品OEMの代表企業の一つがアピです。

アピは健康食品、医薬品、食品、蜂産品、化粧品などを展開しています。

2025年8月期の全社売上高は624億円、経常利益は約50億円でした。

ただし、この数字は健康食品OEMだけの業績ではなく、アピ全体の数字です。

アピの特徴は、製造だけではなく、

商品企画
処方設計
原料開発
研究
品質管理

などを幅広く提供していることです。

このような企業では単純な受託製造だけでなく、顧客の商品開発そのものを支援することで付加価値を高めることができます。

OEMの代表企業② 三生医薬

三生医薬も健康食品・サプリメントの大手受託メーカーです。

2026年3月期の売上高は289億円、営業利益は約11億円です。

同社はソフトカプセル、ハードカプセル、錠剤、顆粒、ゼリーなど幅広い剤形に対応しています。

また、2015年の機能性表示食品制度開始から2025年9月までに、同社がサポートした届出受理件数は693件としています。

ここから分かるのは、OEM企業の競争力が単なる「工場を持っていること」ではないという点です。

製造技術だけでなく、

商品開発+機能性表示+品質保証+製造

まで支援できることが付加価値になります。

③ ブランドメーカーのビジネスモデル

ブランドメーカーは自社ブランドの商品を企画し、消費者へ販売します。

代表的な価値は、

ブランド
商品企画力
顧客基盤
販売チャネル

です。

製造そのものはOEMへ委託することもできます。

つまり、ブランド企業は必ずしも工場を持つ必要がありません。

ブランド企業の利益構造

ブランド企業の売上は、

販売数量 × 販売価格

です。

しかし利益を見る場合には、

原材料・OEM費
物流費
小売・卸マージン
広告宣伝費
販促費
人件費

などを差し引く必要があります。

健康食品では商品によって高い粗利率を確保できる場合がありますが、高粗利=高利益とは限りません。

理由は広告費です。

④ 通販・D2Cのビジネスモデル

健康食品業界で特徴的なのが通販・D2Cです。

消費者庁の2025年調査では、健康食品の購入方法として、

店舗が約60%
インターネット通販が約45%

となっています。

複数回答のため合計は100%を超えます。

つまり健康食品は店舗で購入される一方、通販も非常に重要な販売チャネルです。

D2Cの最大の特徴

D2Cではブランド企業が消費者へ直接販売します。

そのため小売企業を経由する場合と比べ、

顧客情報を直接取得できる
顧客と直接コミュニケーションできる
定期購入を設計できる
クロスセルできる

という特徴があります。

この「顧客との直接的な関係」がD2Cの大きな資産になります。

通販では「初回利益」よりLTVを見る

健康食品通販を理解するうえで重要なのがLTVです。

LTVはLife Time Valueの略で、顧客が取引期間を通じて企業にもたらす経済的価値を意味します。

例えば月3,000円の商品を購入する顧客が平均24か月継続すれば、

3,000円 × 24か月
=72,000円

の売上になります。

企業にとってこの顧客は「3,000円の商品を一つ購入した顧客」ではなく、

将来7万2,000円を購入する可能性がある顧客

として見ることができます。

CACとは何か

もう一つ重要なのがCACです。

CACはCustomer Acquisition Costの略で、一人の新規顧客を獲得するための費用です。

例えば広告費1,000万円を使って新規顧客を2,000人獲得した場合、

CAC
=1,000万円÷2,000人
=5,000円

です。

仮に初回商品の粗利益が2,000円しかなければ、初回販売だけを見ると赤字です。

しかし、その顧客が継続購入し、累計粗利益が2万円になれば、顧客獲得費用を回収できます。

そのため通販型健康食品では、

LTV > CAC

という関係を作ることが重要になります。

定期購入が重要な理由

健康食品と通販の相性がよい理由の一つが、継続利用です。

毎月商品を購入する顧客が増えれば、企業は将来売上を予測しやすくなります。

また、一度獲得した顧客が継続購入すれば、毎月新しい広告費をかけて同じ売上を作る必要がありません。

そのため、

定期購入率
継続率
解約率
平均継続月数

などが非常に重要なKPIになります。

CRMが利益を左右する

通販・D2CではCRMも重要です。

CRMはCustomer Relationship Managementの略で、顧客との関係を管理・強化する考え方です。

例えば、

メール
アプリ
LINE
コールセンター
会員プログラム
商品同梱物

などを通じて顧客との接点を維持します。

新規顧客を獲得するには広告費が必要ですが、既存顧客へ再購入してもらう場合は、新規獲得より低いコストで売上を作れる可能性があります。

そのため健康食品通販では、

新規獲得力+顧客維持力

の両方が重要になります。

FANCLに見る顧客基盤の価値

通販と店舗の両方を持つ代表企業がFANCLです。

キリンホールディングスのFact Book 2026によると、FANCLの2025年売上収益は1,126億円、事業利益は96億円でした。

事業構成は、

化粧品:約5割
サプリメント:約4割

です。

販売チャネルは、

通販:約5割
店舗:約2割
流通:約1割
海外:約1割

となっています。

FANCLの特徴は、商品だけでなく、通販・店舗を通じた顧客接点を持っていることです。

これは健康食品企業を見るうえで非常に重要です。

優れた商品を作っても顧客へ販売するチャネルがなければ売上にはなりません。

一方、強い顧客基盤を持つ企業は、新商品を既存顧客へ販売できます。

つまり、

顧客基盤そのものが企業の競争力

になります。

⑤ 店舗・卸売モデル

健康食品は通販だけで販売されているわけではありません。

ドラッグストア
スーパー
コンビニ
量販店
専門店

なども重要な販売チャネルです。

店舗販売では、ブランド企業が卸売企業や小売企業へ商品を販売します。

店舗モデルのメリット

店舗販売の大きなメリットは、既存の店舗集客力を利用できることです。

全国のドラッグストアへ商品を配荷できれば、自社で一人ずつ顧客を獲得する必要はありません。

一方、

卸マージン
小売マージン
販促費

などが必要になります。

また、競合商品との棚争いもあります。

店舗モデルでは、

何店舗に置かれているか
どの棚に置かれているか
店舗でどれだけ回転するか

が重要になります。

通販と店舗はどちらが優れているのか

どちらかが常に優れているわけではありません。

通販は、

顧客データ
定期購入
CRM
高い直接性

に強みがあります。

店舗は、

大量の来店客
商品比較
即時購入
全国配荷

に強みがあります。

そのためFANCLのように両方を持つ企業もあります。

重要なのは、

顧客がどこで商品を知り、どこで購入し、どこで継続するか

を設計することです。

⑥ 食品メーカー型・垂直統合モデル

大手食品メーカーも健康食品市場へ参入しています。

食品メーカーには、

ブランド認知
研究開発
製造設備
小売との取引関係
物流

など既存の経営資源があります。

これらを利用して健康食品を展開できます。

森永製菓「in」ブランド

代表例の一つが森永製菓の「in」ブランドです。

森永製菓はゼリー飲料やプロテインなどを展開しています。

同社の統合報告書2025では、「in」事業の2024年度売上高は313億円、営業利益は73億円でした。

「inゼリー」や「inバー」などは、一般的なサプリメントとは異なり、食品としての利便性を持っています。

ここから分かるのは、健康食品市場が錠剤やカプセルだけではないということです。

健康ニーズを、

飲料
ゼリー
バー
菓子
食品

として提供することもできます。

健康食品の原価率は低いのか

健康食品について「原価が安い」というイメージを持つ人もいます。

確かに商品によっては販売価格に対して原材料費が低い場合があります。

しかし、企業の利益を見る際には原材料費だけでは不十分です。

健康食品企業では、

原料費
OEM費
容器・包装
物流
広告宣伝
販売促進
小売マージン
コールセンター
研究開発
品質管理

などの費用が発生します。

特に通販型企業では広告費が大きくなることがあります。

したがって、

高い粗利率=高い営業利益率

ではありません。

ビジネスモデル別に重要なKPIは違う

健康食品企業を分析する場合、すべての企業を同じ指標で見るべきではありません。

ビジネスモデル 重要なKPI
原料 採用社数、販売量、単価、研究実績
OEM 売上、受注、工場稼働率、顧客数
ブランド 売上、粗利率、ブランド認知
通販・D2C CAC、LTV、定期率、継続率
店舗 配荷店舗数、店頭回転率
垂直統合 商品別利益、チャネル別利益

例えばOEM企業では工場稼働率が重要ですが、D2C企業では工場稼働率よりCACとLTVが重要です。

同じ健康食品業界でも、見るべき数字は全く異なります。

健康食品業界の参入障壁はどこにあるのか

健康食品はOEMを利用すれば、自社工場を持たなくても商品を発売できます。

その意味では「商品を作る」だけなら参入障壁はそれほど高くない場合があります。

しかし、

商品を作れること

長期的に利益を出せること

は別問題です。

利益を継続するには、

ブランド
顧客基盤
研究
独自原料
品質管理
広告運用
CRM
販売チャネル

などが必要になります。

つまり健康食品業界では、製造そのものより、

ブランドと顧客を作ること

が参入障壁になる場合があります。

今後の健康食品ビジネスモデルはどう変わるのか

今後は大きく三つの方向が考えられます。

第一は、OEM・ODMの高付加価値化です。

単純な製造だけではなく、

研究
商品企画
機能性表示
品質保証

まで提供する企業の価値が高まる可能性があります。

第二は、顧客基盤の価値上昇です。

広告費が上昇すれば、新規顧客を毎回広告で獲得するモデルは収益性が悪化します。

そのため既存顧客を持つ企業ほど、新商品を低いCACで販売できる可能性があります。

第三は、品質管理・エビデンスの重要性上昇です。

健康食品では、安全性、科学的根拠、製造品質への要求が高まっています。

商品企画と広告だけではなく、

研究+品質+ブランド+顧客基盤

を組み合わせることが競争力になります。

まとめ

健康食品業界には一つのビジネスモデルしか存在するわけではありません。

原料メーカーは独自素材や研究で利益を生み、OEM・ODM企業は製造・開発能力で利益を生みます。

ブランド企業は商品とブランドを作り、通販・D2C企業はCACとLTVを管理しながら顧客基盤を構築します。

店舗販売では全国の小売ネットワークを利用でき、食品メーカーは既存のブランド・製造・物流基盤を活用できます。

したがって健康食品企業を分析するときには、

「何を売っているか」

だけではなく、

「バリューチェーンのどこで利益を生み出しているか」

を見る必要があります。

さらに、その利益を守る競争優位性が、

独自原料なのか
製造技術なのか
ブランドなのか
顧客基盤なのか
販売チャネルなのか

を確認することで、その企業の本当の強さが見えてきます。

FAQ

健康食品OEMとは何ですか?

ブランド企業から依頼を受けて健康食品を製造する企業です。ODMでは製造だけでなく、処方設計や商品企画などまで提供する場合があります。

健康食品通販で重要なLTVとは何ですか?

LTVはLife Time Valueの略で、顧客が取引期間を通じて企業にもたらす経済的価値を意味します。継続購入が多い健康食品通販では重要な指標です。

CACとは何ですか?

CACはCustomer Acquisition Costの略で、一人の新規顧客を獲得するために必要な費用です。通販・D2CではLTVとのバランスが重要です。

健康食品は原価が低く儲かるのですか?

商品によって原材料費が低い場合はありますが、広告費、物流費、OEM費、販売手数料、品質管理費なども発生します。したがって原価だけで収益性を判断することはできません。

健康食品企業の競争力は何ですか?

ビジネスモデルによって異なります。原料企業なら独自素材や研究、OEMなら製造・品質管理、ブランド企業ならブランド・商品開発、D2Cなら顧客基盤・LTV・CRMなどが重要になります。

参考資料・出典

  • 消費者庁「いわゆる『健康食品』に関する消費者アンケート調査報告」(2025年)
  • 消費者庁「機能性表示食品について」
  • 公益社団法人日本通信販売協会「サプリメント市場等に関する資料」(2026年)
  • アピ株式会社 会社情報・決算情報
  • 三生医薬株式会社 会社情報・機能性表示食品届出サポート実績
  • キリンホールディングス「Fact Book 2026」
  • 森永製菓株式会社「統合報告書2025」

アセットサロン編集長

日系M&AアドバイザリーファームにてM&A業務に従事。上場企業・中堅企業のM&A仲介・FA業務を中心に、デューデリジェンス、バリュエーション(DCF法・マルチプル法)、スキーム設計、契約交渉、PMI支援を経験。現在は、TDnetに日々公開される上場企業の適時開示情報をもとに、M&Aの背景・財務的影響・業界再編の動向を独自の視点で解説するメディア「アセットサロン」を運営。専門分野:上場会社M&A・TOB・PMI・企業価値評価・資本政策・IR解説

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