健康食品はなぜ売れる?顧客・販売チャネル・マーケティングの仕組みを解説【2026年版】

健康食品は、なぜ売れるのでしょうか。

「健康への関心が高いから」という説明だけでは、健康食品市場の仕組みを十分に理解することはできません。

健康食品の購買行動には、

「誰が買うのか」
「何を期待して買うのか」
「どこで情報を集めるのか」
「どこで購入するのか」
「なぜ継続するのか」

という複数の段階があります。

さらに企業側から見ると、商品を作るだけでは売上にはなりません。

検索、SNS、広告、店舗などで商品を知ってもらい、購入してもらい、その後も継続してもらう必要があります。

特に通販・D2Cでは、新規顧客の獲得コストであるCACと、顧客が取引期間を通じてもたらす価値であるLTVのバランスが収益性を大きく左右します。

本記事では、健康食品を購入する消費者の目的や情報収集行動、店舗・ECなどの販売チャネル、SEO・SNS、定期購入、CRMまで、健康食品マーケティングの仕組みを解説します。

健康食品を購入する人はどれくらいいるのか

インテージヘルスケアが2025年度に実施した調査では、健康食品・サプリメント市場の利用者数は4,678万人、市場規模は1兆1,763億円と推計されています。

一人当たり年間平均購入金額は2万5,143円です。

ただし、この数字はインテージヘルスケア独自の調査定義によるものです。

健康食品市場については、調査会社によって対象商品や集計方法が異なるため、市場規模の数字には差があります。

重要なのは、健康食品・サプリメントが一部の特殊な消費者だけを対象とした商品ではなく、多数の消費者が利用する大きな市場を形成していることです。

健康食品はなぜ購入されるのか

健康食品のマーケティングを理解するには、まず消費者が何を求めているかを見る必要があります。

消費者庁が2025年に健康食品利用者1万人を対象として実施した調査では、健康食品を利用する目的として、主に次のような回答がありました。

利用目的 割合
健康の増進 45.3%
体調維持・病気の予防 42.8%
特定の栄養素の補給 36.8%
疲労回復 32.3%
美容 16.3%
ダイエット 16.1%
アンチエイジング 15.5%
病気の症状改善 11.0%
健康診断結果の改善 6.7%

複数回答のため合計は100%を超えます。

ここから分かるのは、健康食品の購入目的が一つではないことです。

健康維持、栄養補給、疲労、美容、ダイエットなど、多様なニーズが同じ市場に存在しています。

つまり健康食品企業は、「健康に良い商品」を作ればよいのではありません。

どの顧客の、どの健康課題を解決する商品なのか

を明確にする必要があります。

消費者は健康食品に何を期待しているのか

同じ消費者庁調査では、健康食品について、

「大いに期待している」が6.2%、
「ある程度期待している」が57.9%

でした。

合計すると約64%が一定の期待を持っていることになります。

一方で、健康食品に対するイメージを見ると、

「手軽に栄養を補給できる」42.0%

に対し、

「過剰な宣伝・広告が多い」37.0%
「価格が高い」29.9%
「効果は期待できない」20.6%
「安全性に不安がある」16.4%

という回答もあります。

つまり健康食品の消費者は、

期待している一方で疑ってもいる

という特徴があります。

これは健康食品マーケティングを考えるうえで非常に重要です。

健康食品購入で最も重視されるもの

消費者庁調査では、健康食品購入時に最も重視するものとして、

効果 44.2%
安全性 34.0%
価格 19.6%
メーカー・販売者 7.4%
味・飲みやすさ 5.5%

などが挙げられています。

また、商品購入時に参考にする情報として、

成分・含有量 40.8%
原材料 35.8%
機能性 34.7%
製造国 32.7%
ブランド 25.9%

などが挙げられています。

ここから見えてくるのは、健康食品では価格だけではなく、

何が入っているのか
何が期待できるのか
安全なのか

という情報が購買判断に大きく関係していることです。

健康食品はどこで買われているのか

消費者庁の2025年調査では、健康食品の購入方法として、

購入方法 割合
店舗 60.4%
インターネット通販 45.4%
その他の通信販売 15.2%
テレビショッピング 4.5%
個人輸入 1.7%
訪問販売 1.4%

となっています。

複数回答のため合計は100%を超えます。

このデータから分かるのは、

健康食品市場は「店舗かECか」という二者択一ではない

ということです。

店舗も大きな販売チャネルであり、インターネット通販も大きなチャネルです。

同じ消費者が商品によって店舗とECを使い分けることもあります。

店舗で健康食品を買う理由

店舗の強みは、商品をその場で見て比較できることです。

ドラッグストアなどでは、

価格
成分
容量
ブランド
パッケージ

を比較できます。

また、買い物のついでに購入できます。

企業側から見ると、店舗には既存の来店客がいるため、自社で一人ずつ顧客を集客する必要がありません。

一方で、競合商品と同じ棚で比較されます。

そのため、

棚の位置
パッケージ
価格
ブランド認知
店頭販促

などが重要になります。

EC・通販で健康食品を買う理由

EC・通販には店舗とは異なる強みがあります。

商品について詳しく調べられる
口コミを確認できる
定期購入できる
自宅へ配送される
店舗にない商品も購入できる

といった利便性があります。

企業側にとって特に重要なのが、消費者と直接つながれることです。

自社ECや通販なら、

誰が
いつ
何を
どれくらい

購入したかを把握できます。

このデータをCRMや商品開発に活用できます。

消費者はどこで健康食品の情報を得ているのか

健康食品では「どこで買うか」だけでなく、「どこで知るか」も重要です。

消費者庁の2025年調査では、健康食品に関する情報源として、

インターネット 68.3%
テレビ・ラジオ 27.2%
店舗 19.1%
家族・友人・知人 18.6%
雑誌・新聞・書籍 13.0%
チラシ・DM 11.0%
専門家 6.7%

などが挙げられています。

インターネットが最も大きな情報源となっています。

インターネットでは何を見ているのか

インターネットを情報源として利用する人の中では、

検索エンジン 61.0%
メーカー・販売者のサイトやブログ 38.9%
口コミサイト 33.7%
SNS 27.5%
Web広告 10.9%
メールマガジン 8.5%

などが利用されています。

この結果は健康食品マーケティングに重要な示唆を与えます。

企業が広告を出せば消費者がそのまま購入するわけではありません。

広告やSNSで商品を知った後、

Googleなどで検索する
公式サイトを見る
口コミを見る
成分を調べる
他商品と比較する

といった行動が発生する可能性があります。

健康食品でSEOが重要な理由

検索エンジンが主要な情報源である以上、SEOは健康食品マーケティングでも重要です。

例えば消費者が、

「睡眠 サプリ」
「腸活 サプリ」
「鉄分 不足 食事」
「プロテイン 女性」

などと検索した場合、その時点では特定の商品を決めていない可能性があります。

企業が検索意図に合った情報を提供できれば、商品を知ってもらう入口になります。

ただし健康・医療に関係する情報では、正確性と信頼性が特に重要です。

検索順位だけを目的に、科学的根拠のない健康情報を大量に作るべきではありません。

健康食品企業にとってSEOは、

集客施策であると同時に、信頼形成の施策

でもあります。

SNSは若年層との接点になる

健康食品マーケティングではSNSも重要です。

特に美容、ダイエット、プロテイン、韓国系健康食品などでは、SNSとの相性が高い商品があります。

インテージヘルスケアの2025年調査では、韓国の健康食品・サプリメントに関心がある人のうち、10~20代が43%を占めました。

また韓国の商品に対して、

「効果がありそう」26.5%
「トレンド感がある」24.5%
「話題性がある」23.4%

などのイメージが挙げられています。

これは商品の実際の効果を示すデータではありません。

重要なのは、若年層の健康食品購買では、

機能だけでなく、トレンド・話題性・ブランドイメージも影響する

という点です。

健康食品マーケティングは「獲得」で終わらない

健康食品マーケティングの大きな特徴は、初回購入で終わらないことです。

消費者庁調査では、現在利用している健康食品のうち最も長く利用している商品の利用期間について、

5年以上 28.6%
1年以上5年未満 35.5%

でした。

合計すると64.1%が1年以上利用しています。

健康食品には長期間利用される商品が一定数存在することが分かります。

企業側から見ると、この継続性が非常に重要です。

定期購入が重要な理由

通販型健康食品では定期購入がよく利用されます。

例えば月3,000円の商品を購入する顧客が、

1か月で解約すれば売上3,000円

ですが、

24か月継続すれば売上72,000円

になります。

同じ一人の顧客でも継続期間によって企業にもたらす価値は大きく変わります。

そのため通販では、

初回購入者数

だけではなく、

2回目継続率
3回目継続率
平均継続月数
解約率

などを見る必要があります。

CACとLTV

通販・D2Cのマーケティングを理解するうえで重要なのがCACとLTVです。

CACはCustomer Acquisition Costの略で、新規顧客一人を獲得するために必要な費用です。

LTVはLife Time Valueの略で、一人の顧客が取引期間を通じてもたらす経済的価値です。

例えば広告費1,000万円で2,000人の新規顧客を獲得すれば、

CACは5,000円です。

一方、その顧客が長期間購入し、企業へ2万円の限界利益をもたらすなら、顧客獲得費用を回収できます。

健康食品通販では、

LTV > CAC

を維持できるかが重要になります。

CRMでLTVを高める

一度獲得した顧客との関係を維持する活動がCRMです。

健康食品では、

メール
LINE
アプリ
コールセンター
会報誌
商品同梱物
店舗

など、多数の顧客接点があります。

CRMの目的は、単にメールを大量に送ることではありません。

顧客が必要とするタイミングで、

商品の使い方
健康情報
関連商品
継続サポート

などを提供し、顧客との関係を維持することです。

FANCLに見るマルチチャネル戦略

健康食品の販売チャネルを考えるうえで参考になる企業がFANCLです。

キリンホールディングスのFact Book 2026によると、FANCLの2025年売上収益は1,126億円、事業利益は96億円でした。

事業構成は、

化粧品:約5割
サプリメント:約4割

です。

販売チャネルは、

通販:約5割
店舗:約2割
流通:約1割
海外:約1割

となっています。

FANCLは通販だけの会社でも、店舗だけの会社でもありません。

複数の顧客接点を持っています。

例えば、

ネットで商品を知る

店舗で確認する

通販で購入する

定期購入する

という顧客行動も考えられます。

企業側から見れば、チャネルを分断して考えるのではなく、

顧客がブランドとどのように接点を持つか

を見ることが重要です。

キリンに見る「認知→購入→習慣化」

健康食品マーケティングでは、商品を認知してもらうだけでは十分ではありません。

継続して利用してもらう必要があります。

キリンホールディングスはヘルスサイエンス事業において、サプリメントの新規顧客や定期顧客の拡大に取り組んでいます。

また、プラズマ乳酸菌関連商品では、商品認知だけでなく継続利用・習慣化を重要なテーマとしています。

同社によると、2025年のプラズマ乳酸菌関連商品の売上は280億円を超え、サプリメントカテゴリーも前年比約3割増となりました。

ここで重要なのは、

認知 → 購入 → 継続 → 習慣化

という流れです。

健康食品では、一度売ることより、生活の中に商品を定着させることが大きな価値になります。

健康食品マーケティングで見るべきKPI

健康食品マーケティングでは、販売チャネルごとに重要なKPIが異なります。

領域 主なKPI
広告 CPM、CTR、CPC、CPA
新規獲得 CAC、新規顧客数、CVR
通販 定期購入率、継続率、解約率
顧客価値 LTV、購入頻度、客単価
CRM リピート率、クロスセル率
EC セッション数、CVR、客単価
店舗 配荷店舗数、店頭回転率
ブランド 認知率、指名検索、リピート

一つのKPIだけを見ると判断を誤ることがあります。

例えばCPAを下げるために初回価格を極端に安くすれば、新規顧客は増えるかもしれません。

しかし継続率が低ければLTVは上がりません。

したがって、

獲得効率と顧客価値をセットで見る

必要があります。

定期購入にはリスクもある

定期購入は企業にとって安定収益につながる一方、消費者トラブルにも注意が必要です。

消費者庁「令和8年版消費者白書」では、2025年の通信販売における定期購入に関する相談について、「他の健康食品」が2万2,063件となり、商品・サービス別で最も多いカテゴリーとなっています。

健康食品企業にとって、定期購入はLTVを高める仕組みですが、

解約条件が分かりにくい
定期購入であることが分かりにくい
初回価格だけが強調されている

といった販売方法は、顧客との信頼を損なう可能性があります。

短期的にCVRを高めても、苦情やブランド毀損につながれば長期的な企業価値を損ないます。

健康食品では「信頼」がマーケティング資産になる

健康食品は一般的な消費財とは異なり、健康に関係する商品です。

消費者は商品の安全性や効果を購入時点で完全に判断することができません。

そのため、

ブランド
研究データ
成分表示
品質管理
企業の信頼性
口コミ

などが購買判断に影響します。

特に2024年の紅麹関連事案以降、健康食品の安全性や品質管理への関心は高まっています。

この環境では、広告表現を強くするだけではなく、

正確な情報を継続的に提供すること

そのものがマーケティングになります。

健康食品マーケティングは「循環」で考える

健康食品マーケティングを整理すると、

認知

情報収集

比較

購入

利用

継続

口コミ

再購入

という循環になります。

従来の広告中心のマーケティングでは、

広告

購入

だけを考えがちです。

しかし健康食品では継続利用が重要です。

そのため、

売るまでのマーケティング

だけでなく、

売った後のマーケティング

が利益を大きく左右します。

今後の健康食品マーケティング

今後の健康食品マーケティングでは、主に三つの方向が重要になると考えられます。

第一はデータ活用です。

通販、EC、店舗などの購買データを統合できれば、顧客ごとのニーズをより深く理解できます。

第二はオムニチャネルです。

消費者は店舗、EC、SNS、検索を使い分けています。

企業側もチャネル単位ではなく顧客単位でマーケティングを考える必要があります。

第三は信頼です。

健康食品では科学的根拠、品質管理、広告表示などへの要求が高まっています。

今後は、

商品力+顧客体験+信頼

を組み合わせる企業ほど長期的な顧客関係を構築しやすくなるでしょう。

まとめ

健康食品が売れる理由は、「健康に関心があるから」だけではありません。

消費者には、

健康維持
栄養補給
疲労
美容
ダイエット

など多様な目的があります。

商品を知る経路も、

検索
SNS
口コミ
店舗
テレビ

など複数あります。

購入場所も店舗とECの双方が重要です。

そして健康食品ビジネスでは、購入後の継続が収益性を大きく左右します。

そのため企業は、

認知 → 情報収集 → 比較 → 購入 → 継続 → 再購入

という一連の顧客行動を設計する必要があります。

健康食品マーケティングの本質は、

商品を一度売ることではなく、顧客との長期的な関係を作ること

にあります。

FAQ

健康食品はどこで購入されることが多いですか?

消費者庁の2025年調査では、店舗が60.4%、インターネット通販が45.4%でした。複数回答のため合計は100%を超えます。店舗とECの双方が重要な販売チャネルです。

健康食品の情報はどこで集められていますか?

同調査ではインターネットが68.3%で最も多く、テレビ・ラジオ、店舗、家族・友人などが続きます。インターネット利用者では検索エンジンが主要な情報源となっています。

健康食品通販でLTVが重要なのはなぜですか?

健康食品には継続購入される商品が多いためです。初回購入だけでなく、顧客が何か月・何年継続するかによって、一人の顧客が企業にもたらす価値が大きく変わります。

健康食品でSNSマーケティングは重要ですか?

商品カテゴリーや顧客層によって重要度は異なります。特に美容、ダイエット、スポーツ、若年層向け商品などではSNSが認知形成に影響する可能性があります。一方、SNSだけでなく検索や口コミ、公式サイトなども購買判断に使われています。

健康食品マーケティングで重要なことは何ですか?

新規顧客獲得だけでなく、継続率、LTV、CRM、信頼形成まで含めて設計することです。健康食品では長期間利用する顧客も多いため、購入後のマーケティングが重要になります。

参考資料・出典

  • 消費者庁「いわゆる『健康食品』に関する消費者アンケート調査報告」(2025年)
  • 消費者庁「令和8年版消費者白書」
  • インテージヘルスケア「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート2025」
  • インテージヘルスケア「韓国の健康食品・サプリメントに関する調査」(2025年)
  • キリンホールディングス「Fact Book 2026」
  • キリンホールディングス 2026年度決算・ヘルスサイエンス事業関連資料

アセットサロン編集長

日系M&AアドバイザリーファームにてM&A業務に従事。上場企業・中堅企業のM&A仲介・FA業務を中心に、デューデリジェンス、バリュエーション(DCF法・マルチプル法)、スキーム設計、契約交渉、PMI支援を経験。現在は、TDnetに日々公開される上場企業の適時開示情報をもとに、M&Aの背景・財務的影響・業界再編の動向を独自の視点で解説するメディア「アセットサロン」を運営。専門分野:上場会社M&A・TOB・PMI・企業価値評価・資本政策・IR解説

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