リビングプラットフォーム、首都圏の障がい福祉事業を30.9億円で吸収分割承継——承継する営業利益5.2億円は通期予想の約7割

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子会社を通じて障がい者支援事業などを展開するリビングプラットフォーム(東証グロース、7091、以下LPF)は2026年10月8日、連結子会社の株式会社チャレンジプラットフォーム(以下CPF)が、株式会社国土信和(以下KS社)と株式会社日本クリード(以下NC社)の障がい者支援事業などを吸収分割で承継すると発表した。対価はKS社に2,307百万円、NC社に780百万円の計3,087百万円の金銭で、借入金で賄う。効力発生日は2026年12月1日の予定である。

開示資料によれば、LPFは2026年9月15日に入札への参加を決めて意向表明を提出し、10月8日に選定結果の通知を受けて吸収分割契約を結んだ。売手側が実施した入札で選ばれた案件である。

本記事では、承継する事業の利益と対価を比べ、LPFの業績予想に対する規模を確認したうえで、株式取得ではなく吸収分割という方法がとられた意味を整理する。

※情報基準日:2026年10月10日。数値は2026年10月8日付の開示資料による。

承継の条件

項目 内容
承継会社 株式会社チャレンジプラットフォーム(LPFの100%子会社、札幌市)
分割会社 株式会社国土信和(親会社:信和ホールディングス)、株式会社日本クリード(個人株主2名)
方式 吸収分割(対価は金銭)
対価 KS社 2,307百万円、NC社 780百万円(計3,087百万円)。借入金で充当
第三者算定機関 赤坂国際会計(DCF法)
効力発生日 2026年12月1日(予定)。行政上の許認可・指定の手続によっては一部事業所の承継時期が変わる可能性あり
業績への影響 2027年3月期への影響は精査中

KS社とNC社は、いずれも東京都中央区東日本橋の同じ所在地を本店としている。

承継する事業

区分 内容
障がい者グループホーム(短期入所含む) 14施設、定員430名
生活介護 15施設、定員361名
就労継続支援B型 4施設、定員73名
住宅型有料老人ホーム 1施設、定員38名
不動産管理 賃貸住宅管理45物件、建物管理199物件
公共施設事業 5施設

対象地域は埼玉県、千葉県、東京都である。なお、開示資料の「本吸収分割の目的」の項では就労継続支援B型事業所を3施設と記載している一方、「承継する事業部門の内容」の項では4施設・定員73名としており、記載が一致していない。

CPFはこれまで、北海道、宮城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県で39施設を運営してきた。今回の承継で、首都圏での施設数が大きく増えることになる。

対価は利益の何倍か

開示された承継事業の経営成績と対価を比べると、次のようになる(倍率は筆者計算)。

分割会社 承継事業の売上高 承継事業の営業利益 営業利益率 対価 対価÷営業利益
KS社 1,699百万円 324百万円 約19.1% 2,307百万円 約7.1倍
NC社 2,538百万円 200百万円 約7.9% 780百万円 約3.9倍
合計 4,237百万円 524百万円 約12.4% 3,087百万円 約5.9倍

利益率の高いKS社の事業には営業利益の約7.1倍、利益率が8%弱のNC社の事業には約3.9倍の対価がつけられている。

第三者算定機関のDCF法による算定結果と比べると、対価の位置は次のとおりである。

分割会社 DCF法の算定レンジ 対価 レンジ内の位置
KS社 2,189〜2,415百万円 2,307百万円 ほぼ中央(中央値は約2,302百万円)
NC社 672〜784百万円 780百万円 上限付近

承継する資産と負債(2026年12月時点の見込み)は、KS社分が資産1,209百万円・負債117百万円、NC社分が資産718百万円・負債437百万円である。差し引いた純資産は合計で約1,373百万円となり、対価との差額は約17億円になる(筆者計算)。資産・負債の時価評価によって変わるが、相当額がのれんとして計上される可能性がある。KS社分の資産のうち1,100百万円は流動資産であり、現金や売掛金の内訳によっては実質的な取得負担は小さくなる。内訳は開示されていない。

LPFの業績予想と比べた規模

LPFが2026年8月14日に公表した2027年3月期の連結業績予想は、売上高24,170百万円、営業利益747百万円、経常利益616百万円である。

承継事業の営業利益524百万円は、この営業利益予想の約70%に相当する(筆者計算)。売上高4,237百万円は売上高予想の約17.5%である。売上に比べて利益の比重が大きく、LPFの利益水準を押し上げる案件といえる。効力発生は12月1日の予定であるため、2027年3月期に取り込まれるのは最大で4か月分になる。

承継会社のCPF自体の業績は、2026年3月期で売上高1,934百万円、営業損失41百万円、純資産は△122百万円の債務超過である。承継事業の売上高はCPFの売上高の2倍を超える。債務超過の子会社が約31億円の借入で自社の2倍超の事業を受け入れる形であり、借入金がLPFとCPFのどちらに置かれるのか、親会社の保証や支援がどう付くのかは、今後の開示で確認したい点である。

なぜ株式取得ではなく吸収分割なのか

開示資料は手法の選択理由を説明していない。ただ、数字からはいくつかの理由が考えられる。

KS社は障がい者支援事業のほかに不動産管理事業と公共施設事業を営んでおり、会社全体の売上高は1,854百万円(2026年4月期)である。承継事業の売上高1,699百万円との差から、KS社の事業の一部は分割会社側に残るとみられる。会社ごと株式を買うのではなく、吸収分割で必要な事業だけを切り出して引き継げば、承継しない事業や承継契約に定めのない債務を引き受けずに済む。売手側も、残したい事業や資産を手元に置いたまま対価を現金で受け取れる。

一方で、福祉事業所の指定は事業者ごとに受けるものであり、吸収分割で事業を移す場合は、承継会社側で改めて指定などの手続が必要になる場合がある。開示資料が、一部の事業所は12月1日までに承継できない可能性があると記載しているのは、この点を指していると考えられる。

結論:利益構造を変える規模と、引き受けた3つのリスク

LPFは、入札を通じて首都圏の障がい福祉事業を、営業利益の約5.9倍、計30.87億円で取得する。承継する営業利益は同社の通期営業利益予想の約7割に当たり、規模の面では会社の利益構造を変える案件である。その分、約31億円の借入、約17億円規模と見込まれるのれん、行政手続による承継時期のずれという3つのリスクも抱える。

次の確認ポイントは、効力発生後に開示されるのれんの確定額と借入の条件、そして2028年3月期の業績予想にこの事業がどう織り込まれるかである。

介護・福祉事業を他社から引き継いだ案件、会社分割で事業を移した案件として、次の記事も参考になる。

出光が手放したリハビリデイサービスをトーカイが29億円で取得——介護インフラ企業への転換を加速する戦略M&A
https://assetsalon.online/tokai-qlc-produce-rehabilitation-dayservice-acquisition-2026/

明電舎、水インフラO&M事業を子会社へ会社分割——資産42百万円で売上23億円を移す「契約と人」の再編とウォーターPPP
https://assetsalon.online/meidensha-water-om-spinoff/

引用元

一次情報

株式会社リビングプラットフォーム「連結子会社における会社分割(吸収分割)による事業の承継に関するお知らせ」(2026年10月8日)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20261008/140120261008548190.pdf

ディスクロージャー

本記事は株式会社リビングプラットフォームの適時開示資料をもとにした分析です。対価の倍率、DCFレンジ内の位置、承継純資産と対価の差額、業績予想に対する比率などは開示数値から筆者が計算したもので、手法の選択理由についての記述は筆者の解釈です。特定銘柄の売買を勧めるものではありません。判断にあたっては一次情報を確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

アセットサロン編集長

日系M&AアドバイザリーファームにてM&A業務に従事。上場企業・中堅企業のM&A仲介・FA業務を中心に、デューデリジェンス、バリュエーション(DCF法・マルチプル法)、スキーム設計、契約交渉、PMI支援を経験。現在は、TDnetに日々公開される上場企業の適時開示情報をもとに、M&Aの背景・財務的影響・業界再編の動向を独自の視点で解説するメディア「アセットサロン」を運営。専門分野:上場会社M&A・TOB・PMI・企業価値評価・資本政策・IR解説

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