AIAIグループ、療育のハビーを32.5億円で子会社化——ウェルビーが切り出した71施設を承継純資産の約2.3倍で取得

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案件の骨格

東証グロース上場のAIAIグループ株式会社(証券コード6557)は2026年7月24日、児童発達支援・放課後等デイサービスを運営するハビー株式会社の全株式を取得し、子会社化すると発表した。取得価額は普通株式3,250百万円に諸費用(見込)85百万円を加えた合計3,335百万円(見込)。株式譲渡は予定どおり2026年9月1日に実行され、ハビーは連結子会社、その子会社のアイリスとハピネスカムズは孫会社となった。

設立から1年に満たない会社を33億円で買う——この事実だけを見れば奇妙に映るかもしれない。しかしハビー株式会社は、ポラリス第五号投資事業有限責任組合を大株主とするウェルビーホールディングス株式会社のグループで、ウェルビー株式会社から療育事業を吸収分割で承継した「受け皿会社」である。筆者の見方では、本件はPEファンドが関与する事業会社が切り出した事業を、M&Aによる規模拡大を掲げる上場企業が引き取る取引といえる。

本記事が掘り下げる問いは一つである。PEファンドが関与する事業会社が切り出した療育事業を、なぜ今このタイミングでAIAIグループは引き取ったのか。

※情報基準日:2026年10月5日。

項目 内容
案件名 ハビー株式会社の株式取得(子会社化)
開示会社 AIAIグループ株式会社(証券コード6557、東証グロース)
対象会社 ハビー株式会社(東京都中央区銀座、児童発達支援・放課後等デイサービス等)
売手 ウェルビーホールディングス株式会社(大株主:ポラリス第五号投資事業有限責任組合)
スキーム 株式譲渡による完全子会社化(発行済株式200株、議決権所有割合100%)
取引金額 普通株式3,250百万円+諸費用(見込)85百万円=合計(見込)3,335百万円
実行予定日 2026年9月1日に株式譲渡を実行(開示日:2026年7月24日)

ウェルビーHDが整えた「受け皿」——吸収分割から84日での譲渡

ハビー株式会社は2025年12月15日に設立された会社だが、2026年5月1日付でウェルビー株式会社から療育事業を吸収分割の形で承継した。承継した事業の2026年3月期売上高は3,470百万円に上る。吸収分割の効力発生日(5月1日)から株式譲渡契約締結(7月24日)までは84日間しかない。筆者の見方では、この短さは、ウェルビーホールディングス側が会社分割によって療育事業を切り出し、譲渡しやすい形に整えたうえで、買い手候補との交渉を前広に進めていたことを示唆している。

買い手側の視点で見ると、対象会社であるハビー株式会社自体には単体の決算実績がほぼ存在しない。開示資料が承継事業の経営成績(売上高3,470百万円)と財政状態(流動資産616百万円、固定資産1,251百万円等)を参考情報として別掲しているのはそのためであり、買い手は「対象会社の決算書」ではなく「承継事業そのものの実態」を承継直前の財政状態から精査する必要があった案件だったといえる。

取得価額は承継事業の売上高の約0.94倍、承継純資産の約2.3倍

以下は開示数値に基づく筆者の試算である。株式の取得価額3,250百万円を承継事業の2026年3月期売上高3,470百万円と比べると約0.94倍(諸費用込みの3,335百万円では約0.96倍)となる。2026年5月1日時点の承継資産・負債の帳簿価額(流動資産616,939千円・固定資産1,251,390千円、流動負債138,446千円・固定負債292,212千円)から求めた純資産は約14.4億円で、取得価額はその約2.3倍にあたる。運営71施設で割ると1施設あたり約46百万円の計算になる。開示資料には、対象会社の資産・負債の状況や将来の収益計画等を勘案し両社協議のうえで決定したとの説明があるが、具体的な算定根拠までは開示されていない。売上高倍率という単一指標だけで割高・割安を断定することはできないが、承継事業の直近収益規模を踏まえた検証は、取得価額の妥当性を考えるうえでの出発点になる。

施設数の合算ではなく、「三育圏」という機能の掛け合わせ

AIAIグループは保育施設AIAI NURSERY等115施設と、2026年2月に子会社化したきららグループホールディングス傘下のモード・プランニング・ジャパン(MPJ)が運営する保育施設77施設に加え、AIAI PLUS・AIAI VISITといった既存の療育事業を運営し、192施設を展開してきた。開示では、両社の保育・療育施設の連携による利用者導線の強化と、支援領域拡大を通じた「AIAI三育圏」構想の推進が第一の狙いとして挙げられている。保育施設に通う子どものなかには療育支援を必要とするケースもあり、グループ内に保育と療育の両方の受け皿を持つことは、保護者の利便性向上とグループの顧客基盤の相互活用という両面の意味を持つ。既存の療育事業とハビーグループのノウハウを掛け合わせることで、単純な施設数の合算以上の質的な底上げが期待される。

ハビーは子会社の株式会社アイリス(大阪、放課後等デイサービス7教室)・株式会社ハピネスカムズ(群馬、放課後等デイサービス6教室)を含め、全国71施設を運営する。本件実行後のAIAIグループの運営施設数は263施設となる予定だ。開示が繰り返し強調するのは施設数の合算そのものではなく、障害児相談支援を含む「切れ目のない支援体制」の構築や管理部門の運営効率化であり、単純な規模拡大とは一線を画す買収ロジックとして読み取れる。

借入前提のクロージング、資金調達条件は契約締結後も協議中

7月24日の開示では、取得資金を金融機関からの借入によって調達する予定であり、現在金融機関と条件等を協議中であることが明記されている。3,335百万円という取引規模に対して、契約締結の時点で資金調達条件が確定していないことは、クロージングまでの間に調達条件がまとまらない場合のリスクを内包する。株式譲渡契約における資金調達を前提条件としてどう規定しているかは開示上明らかにされていないが、株式譲渡は予定どおり9月1日に実行されており、筆者の見方では、金融機関との協議は契約締結前からある程度進んでいたとみられる。

加えて、傘下に入る3社の収益性には差がある。開示財務諸表によれば、アイリスの営業利益率は約5.1%(2026年3月期、営業利益22,615千円÷売上高444,381千円)である一方、ハピネスカムズは約26.0%(62,879千円÷241,571千円)に達する。グループ買収では親会社の数値だけでなく、子会社ごとの収益構造の違いを個別に把握したうえで統合後の運営方針を検討する必要があり、この点は本件のPMI(統合後経営)における実務的な論点になる。

PEファンドが育成した事業を、なぜ今引き取ったのか

筆者の見方では、本件を貫く論理は一つに集約される。ポラリス第五号投資事業有限責任組合を大株主とするウェルビーホールディングスのグループは、療育事業を会社分割によって整理し、譲渡しやすい形に整えたうえでAIAIグループに譲渡した。AIAIグループにとっては、拠点網・専門人材・運営ノウハウを自前でゼロから積み上げるより、既に71施設を運営する事業体をまとめて取り込むほうが、「三育圏」構想の完成度を高める近道だった。「今」というタイミングは、売り手側の受け皿会社整備が完了し、買い手側の資金調達の目処が立った時期が重なった結果とみられる。自社の事業領域に、PEファンドが関与する事業会社の切り出し候補が存在しないか、一度棚卸ししてみる価値がある。PEファンドの手放した会社を事業会社が取得した例としては、セイワHDによる保安道路企画の子会社化も参考になる。

引用元

AIAIグループ株式会社「ハビー株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」(2026年7月24日)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260724/140120260724599405.pdf

同社「(開示事項の経過)ハビー株式会社の株式取得完了のお知らせ」(2026年9月1日)
https://tdnet-pdf.kabutan.jp/20260901/140120260901529662.pdf

ディスクロージャー

本記事は、AIAIグループ株式会社が2026年7月24日に開示した「ハビー株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」等の公開情報をもとに作成した個人の見解であり、特定の銘柄への投資を勧誘する目的のものではない。「筆者試算」「筆者の見方」とした部分は筆者独自の計算・解釈である。記載内容の正確性・完全性を保証するものではなく、将来の業績や株価の動向を示唆するものでもない。本件の詳細な法務・会計・税務上の取扱いについては、必ず一次情報である適時開示資料を確認のうえ、弁護士・公認会計士・税理士等の専門家に相談することを推奨する。

アセットサロン編集長

日系M&AアドバイザリーファームにてM&A業務に従事。上場企業・中堅企業のM&A仲介・FA業務を中心に、デューデリジェンス、バリュエーション(DCF法・マルチプル法)、スキーム設計、契約交渉、PMI支援を経験。現在は、TDnetに日々公開される上場企業の適時開示情報をもとに、M&Aの背景・財務的影響・業界再編の動向を独自の視点で解説するメディア「アセットサロン」を運営。専門分野:上場会社M&A・TOB・PMI・企業価値評価・資本政策・IR解説

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